香川県の稲作の水管理

香川県

 日本列島のやや南西寄りに位置する香川県では、主に「ヒノヒカリ」と「コシヒカリ」が栽培されています。土壌の浸透性は平均的なレベルですが、瀬戸内海沿岸は日本の中でも降水量の少ない地域で、昔から渇水による被害をたびたび受けてきました。水管理という点で特筆すべき地域と言えます。
 香川県の水資源を語る上で欠かせないのがため池と香川用水です。ため池は江戸時代を中心に作られましたが、池を作って水を溜め稲作に利用するという考え方自体は古代からありました。例えば日本最大のため池と言われる満濃池は8世紀に作られ、その後決壊して12世紀に使われなくなり、中に集落ができたりしていましたが、17世紀の復旧工事により復活しました。
 そうした努力にもかかわらず香川県では頻繁に干ばつが発生していましたが、1974年に香川用水が完成したことにより水資源の供給は大幅に改善されました。香川用水は高知県の早明浦ダムを水源として徳島県に流れる吉野川の水の一部をトンネルで香川県に分流させるもので、水系をまたぐ導水という画期的な事業です。水利権に関係する交渉は全国どこでも解決の難しいものですが、香川用水事業の上位にある吉野川総合開発計画では、関連する四国4県全ての調整の結果、渇水に悩む香川県と吉野川の氾濫に悩む徳島県の利害が部分的に一致したこともあって交渉がまとまり、この事業が完成することになりました。ただ、これで干ばつが全くなくなったわけではなく、1994年と2005年には深刻な干ばつを経験しました。このうち2005年の干ばつは、底をついていた早明浦ダムの貯水量が台風によって1日で解消することで解決するという、近年の水資源の不安定さを象徴するできごとでした。
 このような水事情から、香川県では渇水への危機意識が高く、乏しい水資源を有効に利用する工夫がなされています。例えば中干しは行わない傾向にあり、また、田面が乾燥して大きなひびが入ってしまうと、水を入れても抜けやすくなってしまうため、ひびが入る前に走り水などを行って、常に湿り気を保つようにしています。また渇水時になると節水栽培という管理方法に切り替え、また農業用水の供給についても、番水(24時間体制で供給時間を決め、順番に水を供給すること)などの細かい管理方法が確立しています。