岩手県の稲作の水管理

岩手県

 岩手県では「ひとめぼれ」をメインに、県北では「あきたこまち」を栽培しています。東北地方の水資源は豊富で、深刻な渇水はほとんどありません。地力にも富んでおり、落水は低地では1日あたり10mm、山間部では30mm程度です。
 岩手県の稲作の水管理には慣行農法と深水栽培の2つのパターンがあります。慣行農法は主に地力の高い土壌で行われ、中干し前から間断かんがいを行うのが特徴です。これにより根に酸素を供給することができ。また養分を調整する働きもあります。間断かんがいは週2回(水持ちのいい田)から3回(落水の早い田)程度の頻度で水を入れますが、地域によって4湛3落(4日でなくなるくらいの水を入れ、さらに水がなくなってから3日置いてから水を入れる)や2湛2落といったパターンが決まっています。水を入れる深さは農家によってまちまちですが、だいたい30~40mm程度と思われます。一方、深水栽培は水を多めに湛水して行う栽培方法で、分げつを抑制して保温を行う効果がありますが、地力の高い所で行うと窒素が過剰になってしまいます。
 どちらの水管理方法でも中干しは行いますが、その際には小ひびで管理(地面に小さいひびが入るくらいまで乾燥し、その後も雨が降らないようなら走り水をして濡らす)をし、コンバインを入れにくいような所は強めに乾かします。ただし乾き過ぎると脱窒が起きて収量が低下してしまいます。中干しの後、冷害の恐れがある場合には出穂時まで深水で栽培します。その場合は10~15cmの深さに水を入れます。より土壌を酸化的にする必要がある時には、間断かんがいよりもさらに水を少なくする飽水管理という方法を取ります。これは水を入れて落水した後、足跡にまで水がなくなったら次の水を入れるというタイミングで管理をします。出穂前後は水を十分に供給する必要があるため、湛水します。これを花水と呼びます。